前提:人についてより深く知るためには
- 怒っている状況に直面する
- 一緒に旅行してみる
- お金に関連する状況を経験してみる
- 一緒に暮らしてみる
状況:ある日、母がチキンフランチャイズ事業を経営したいと言い出した。
突然だった。体力的に厳しく、20代、30代の起業家ですら絶対に1人でできないと聞いていたチキン事業を、70歳を超えた年齢にもかかわらずやってみたいと言われたのだ。さらに驚くべき点は、その事業の遂行を私の事業者登録証で、その事業の初期資金を私が運営する事業体の企業口座と紐づけられたローン商品を通じて調達してほしいという依頼だった。
さらに、デジタルデバイスの操作に慣れていない母に代わって、デリバリーアプリ関連のオンライン事業全般の代理構築と安定化作業、さらにはチキンを揚げる機器の使用における力仕事まで、初期費用の最小化という名目で、息子である私に手伝ってほしいと頼まれた。それなりに大きな決意をされたのか、かなり遠慮なく、というか無理難題を押し付けてくる母の言葉に、私は口を開くことができなかった。
現象:小学生が社長の持ち株会社関連事業所に呼び出された課長さんの気分って、こんなものだろうか?
まず、私は本業がある。それに加えて、母からの家族としての最初の助けを求める要請は、母にとっても私にとっても初めての分野の、別の専門性を必要とする、1日のほとんどの時間を費やさなければならない無理難題だった。何よりも、母の言葉から確認できる事業に関するあまりにも多くの基準が、何度か事業体を運営してきた私の視点とあまりにもかけ離れており、私はますます口を閉ざすしかなかった。
事業は、常に社長個人の私的なプロジェクトである。
どのような目的、アイテム、形態で進められようとも、事業の始まりと終わりには、常に創業者の私的な領域における意味と目的が込められている。しかし、母は、この私的な事業の意図と目的について、期待売上高だけを述べていた。なぜあなた様が社長としてこのアイテムが良い選択なのか、どのように地域内の後発参入者として既存のプレーヤーと差別化された価値を提供できるのかについては、全く話が聞けなかった。
事業はマラソンである。
母は、最初の3ヶ月後に月4000万円の売上達成が可能だとフランチャイズ会社の話に力を入れていた。しかし、3ヶ月という期間の後に目標額に到達しなかったら?30代の男女または夫婦が毎日午前11時から翌朝4時まで営業しても体力的に1年間維持が非常に難しい事業を、相対的に高齢の母が投資後に数週間で対応できないと判断したら?衣料品、眼鏡などのアイテムで特定の商業施設を訪れる浮動人口を対象に売上を創出できていた母のこれまでのオフライン店舗運営経験が、オンラインでしか広報、販売、決済、顧客管理まで解決しなければならないこの見慣れない形態の事業運営に大きな助けにならないとしたら?
社長の唯一の役割は、向き合い責任を負うことにある。
従業員は、業務遂行中に詰まったりミスをした時に社長を探したり、最悪の場合逃げ出してしまったりする可能性がある。一方、社長は自分が投資し直接運営する事業体であるため、どんな場合でもその場を維持しなければならない。そのため、社長は必然的に自分の業に関連するすべての業務を圧倒する存在になることを目標にしなければならない。予期せぬ突発的な変数が発生しても、黙々とそれを直接向き合い解決する最前線に立つ唯一の存在だからである。しかし、母は事業者登録も、事業資金も自分の名義で進めない計画を立ててきた。むしろ私が初期事業資金全額を支援して見守る方が良いのに、公式には新しい事業に関するあらゆる責任を自分ではなく他人に委任して始めようとする決定は、事実上、社長としての成果だけを期待し責任を負わない高位幹部の役割にとどまろうとする宣言にも等しかった。
提言:予備起業家として、自ら堂々とできる過程が必要なようだ
母は、今回の決断を私に共有する前に、約半年近く、地域内の様々な中小規模の事業体を実際に訪ね歩き、空間、インテリアを確認し、各事業体の社長に商圏、ブランド力、事業資金など、具体的で現実的なアドバイスを求めていた。時々、一人でバスで移動して行くのが大変だと言っていたので、合間合間に時間を割いて車で迎えに行き、話を聞いていた記憶は、いつか思い出になるだろうと嬉しく思って臨んでいた。そうやって着実に、いつか私も事業をやってみようという漠然とした思いから自ら離れ、少しずつ具体的な方向を作り上げていく母の後ろ姿は、私に何とも言えない充実感と誇らしさをもたらしてくれた。しかし、結局母の選択は、全体的な回避に近いものだった。
もちろん、私は母を尊重し、尊敬し、愛している。さらに、母の恐怖心も、ある程度理解している。アンドロイド携帯電話に「出前館」アプリをインストールすることすら難しい母にとって、以前の事業に比べて安価な費用で調理スペースだけを借りれば、オンラインプラットフォームを通じて短期間に高い売上を上げられるというフランチャイズ会社の宣伝は、確かに魅力的で、同時に非常に恐ろしいものだっただろう。しかし、この期待と恐怖の間の綱引きは、この世のすべての社長が直面する毎日の日常的な現実である。私の基準から見た母は、事前調査段階ですでに強烈な実行力を自分自身に、ある程度証明していた。しかし、予備事業家としての期待感と責任感、漠然とした専門性に対する恐怖心が、母の思考と体を凍り付かせてしまったのではないかと考えた。
言えなかった思い
私は今回のことで、むしろ父が母に対して抱いていた長年の態度を確認した。母の計画は、これまで多くのことを黙々と解決してきた父との関係から生まれたのではないかと考えた。しかし、そんな父でも、社長としての役割を代行することはできないため、母に必要なのは、自分を信じざるを得ない状況にさせる、小さくても明確な実践の過程でなければならない。母が会った各ブランド店舗の社長を訪ねて、無償で1週間だけでも仕事を教えてほしいと申し出ていたらどうだっただろうか?年齢がずっと若い他の従業員や社長との仕事は、機会が与えられたとしても受け入れるのが難しい部分も予想される。ただし、母の目的がこれほど明確で、意志があるのなら、この小さく見える、自ら少しでも見慣れない分野の予備起業家としての不安を取り除く一歩を自ら作り出すことが、結局は母にとって最善の選択になる可能性もあったのではないかと考えた。
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